鎌倉・湘南 有用植物塾 レポート


2017.12.9(土)

【第1回】「冬の常緑性樹木と薬草」獅子舞谷~天園~鷲峰山~覚園寺裏山

12/9(土)、気持ち良い秋晴れの中、第1回 鎌倉・湘南有用植物塾を開講させて頂くことができました。

 

この日はじめに歩いた獅子舞では、太陽の光に照らされた見上げるほど大きなモミジの、素晴らしい紅葉を見る事ができました。

 

鎌倉宮から獅子舞までは、スミレホトトギスクマザサヤダケヤブランカナムグラなどを観察しながら歩きました。


クマザサは熊笹ではなく'隈笹'で、秋頃より葉の内から外へ、徐々に葉の縁が白くなっていきます。生薬名は淡竹葉で、清熱、除煩、止渇等に利用できます。

 

ヤブランの葉はジャノヒゲより葉が太く、その紡錘根は生薬で大葉麦門冬といい、滋養強壮、咳止めなどに利用します。

 

ヤダケは鎌倉に由来が深く、真っ直ぐで丈夫であること、またこの地域一帯豊富に自生していることから、鎌倉武士が使う弓矢の矢に多用されていました。意外にも竹ではなく笹の仲間で、生長後も皮が桿を包んでいる事から笹とわかります。春に美味しく頂くネマガリダケも、同じく笹の仲間です。


二階堂川の源流に添い、岩壁に囲まれた古道の山道に入ってから目に飛び込んできたのは、木の幹に沢山連なって発生している、薬用のコフキサルノコシカケ、そしてシイタケ、猛毒のニガクリダケです。

 

紅葉の見事なイチョウは雌雄異株で、薬効が高いのはやはり子孫を残す雌の方です。クワもまた同じく、利用するのは雌の方が良いそう。

 

そして天園休憩所近く、六国峠の岩上の展望地では、山に囲まれた鎌倉市街、稲村ヶ崎の先に広がる相模湾まで見事な眺望に感激しました。


お昼休憩後、鎌倉最高地点の大平山山頂附近では、庭木などでもよく見かけるヒノキ科のビャクシン(イブキ)や、赤い実を付けたビナンカヅラ(サネカズラ)スギを観察しました。

ビャクシンの葉はヒノキ科だけあってとても良い香りがします。

ビナンカズラの実は南五味子といい、滋養強壮や鎮咳に利用できます。また刻んだ蔓を水に浸けると粘性が出るため、かつて寝癖直しなど整髪に使われたのが植物名の由来です。

スギは沢山の実をつけていましたが、薬酒として利用する事で、花粉症の緩和に効果があるそう。


さらに歩くと、山道から少し下がった斜面に、ハート形の葉に特徴的な模様のあるカンアオイ(カントウカンアオイ)を見つけました。

暗紫色で鐘形の花は殆ど土に埋もれています。根は生薬の土細辛で、鎮咳に利用できるそう。アオイは'葵の御紋'のモチーフなのも納得できます。

 

そして足元には真っ赤に綺麗に紅葉したウルシ科のハゼノキの葉、見上げると立派な大木でした。雌雄異株で、すぐ近くの雌木には沢山の実がなっています。これを圧搾し採取した木蝋は、和蝋燭や軟膏などに利用されています。

 

この他にもハリギリ、オニドコロ、カイガラタケ、フユイチゴ、ヤブミョウガ、ヤブコウジ(ジュウリョウ)、ヤブニッケイなど鎌倉の多様な植生を知る事ができ、また美しい紅葉や景色も満喫できた1日でした。