鎌倉・湘南 有用植物塾レポート


2018. 1.15 (土)

【第2回】「海辺の有用植物と春の七種を探そう」

長谷駅~坂ノ下海岸~由比ヶ浜海岸~大仏坂切通(旧道)~火の見下~北条氏常盤亭跡~佐助トンネル~葛原岡~其中山房~北鎌倉駅

暦の上では晩冬の小寒、まだまだ寒い日が続きますが、当日は晴天の中、春の息吹を感じられる様々な有用植物(約40種)を観察することができました。

 

江ノ電長谷駅から、坂ノ下~由比ヶ浜海岸を歩いていくと、今回のテーマ「春の七種」の一つ、’すずしろ’(ハマダイコン)を見つけました。

 

砂から出ている若葉はまだ小さくて柔らかく、砂の中の大根もすらっと細めでしたが、辛味も少なく美味です。

そして浜に打ち上げられた春のワカメも見つけました。

 


海岸から大仏坂切通(旧道)まで、ちょっとレアな大仏の横顔や後ろ姿を拝見しながら、キヅタイヌマキネズツゲカラタチ(葉を揉むと若い柑橘の良い香り)等を観察しました。

 

そして2つ目の七種、’はこべら’(今回はウシハコベ)。春の大地の味がして、七草粥の良いアクセントの一つとなります。

近くの石垣にはハルノノゲシが黄色い花をつけており、この時期はほんのり酸味がありますがアクも無く、しゃっきりとして美味しいです。全草を乾燥させ、煎じたものは滋養強壮に利用できます。

 


その後もリョウメンシダネコノメソウマムシグサの紅い実(毒)、ヒメウズ(毒)、ヤブランの黒紫色の実、ユズリハ(料理の仕切りやかいしき等に利用)等を観察しつつ、いよいよ大仏坂切通(旧道)の急登に入りました。

 

石段の脇にはカントウタンポポの一種、珍しいシロバナタンポポノコンギクは紫色の花を咲かせていました。

そして本日3つ目の七種、’ほとけのざ’(コオニタビラコ)。葉の先端が亀甲状で縁は滑らか、葉軸が赤味を帯びやすくロゼット状と特徴があり、慣れてくると開花前でも見分けることができます。

 

4つ目の七種は、’せり’(セリ)。湿地や川べりに生える多年草で、香りがよくアクも無いため様々な料理に利用できます。茎葉を乾燥させたものを生薬で水芹(すいきん)と言い、食欲増進、神経痛、リウマチ、黄疸、解熱等に効果があります。

 


そしてカントウタンポポは、柔らかそうな若葉がそこかしこに出ていました。少しアクがある為、洗って水にさらした後、そのままサラダでいただきます。少し苦みはありますが、シャキシャキとしてみずみずしく美味です。でもどちらかと言うと、セイヨウタンポポの方がアクは少なく食べやすいとのことでした。

 

他にも、この時期は苦みもなく食べやすいクコの若葉や、鳥がついばんで二つに裂けた咲きはじめの綺麗なヤブツバキの花が沢山落ちていました。

 

しばらく山道を歩きながらタチツボスミレ(全草食用できます)の若葉、ヤブジラミハルジオンヤブコウジマンリョウを観察した後、広葉樹の倒木に見つけたのは、まるで青灰色のビロードのように光沢のあるカワラタケです。傘の裏面も白っぽく新しいもので、煎じ液や薬酒は抗腫瘍など薬用に利用できます。

 


山を下り住宅地に出てからも、サネカズラムベタネツケバナセイヨウカラシナゲッケイジュ等を観察しつつ、北条氏常盤亭跡に着きました。ここでは倒れかけたイブキの大木や、ジュズダマの群生地を見つけました。

 

ハトムギによく似たイネ科のジュズダマは、現在は白っぽく枯れていましたが、艶のある灰色の実を沢山つけており、熟す前の実や葉を煎り、お茶にして美味しくいただけます。生薬では川穀(実)、川穀根(根)と言い、根はリウマチ、神経痛、肩こりに利用します。

 


佐助トンネルを抜け、葛原岡でお昼休憩の後、珍しいものを見つけました。コフキサルノコシカケの幼菌が、その成長順に並んでいる様子が一度に観察できる樹木で、なかなか出会えないものです。今後も継続して成長の様子を観察していきたいと思います。

 

その後も珍しい濃紫色のシチク(紫竹)(茶道具に使えそう…)、ヤマウコギヤマユリの群生地、雌のイブキの見分け方を学びつつ、予定にはありませんでしたが、北大路魯山人の庵「其中山房」も見学することができました。

 


今回のテーマ「春の七種」は旧暦に沿っており、全ての薬草が出揃うのは2月以降となりそうですが、寒い中でも思いがけず沢山の有用植物に出会えた楽しい1日となりました。

※今回観察した有用植物の薬効や利用法などの詳細は、有用植物図鑑に掲載中です)